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サイバーセキュリティ

クラウド時代の“境界なき”セキュリティ:意外と知らないゼロトラスト

公開日:2025年10月 カテゴリ:情報セキュリティ基礎

かつて企業のセキュリティは「社内と社外」の境界線で守られていました。ですがクラウドとテレワークが当たり前になった今、境界は意味を失いつつあります。 その現実に対応するために登場したのが「ゼロトラスト」。「誰も何も信頼しない」という哲学に聞こえますが、実際には「すべてのアクセスを確認する」という運用モデルです。

1. 境界からIDへ:守る軸の変化

オンプレ時代はファイアウォールを境界に置き、社内ネットワーク内を「安全」とみなしていました。 しかし、SaaSや外部委託が増えた現在、業務の中心はクラウド上のアプリケーション。 つまり、攻撃者が狙うのは「ネットワーク」ではなく“ID”です。MFA(多要素認証)やSSO(シングルサインオン)は、ゼロトラストの入口であり基礎です。

2. ゼロトラストの3層構造

この3層を組み合わせて、アクセスを一回ごとに評価するのが「ゼロトラスト・アーキテクチャ」です。 つまり、VPNの内側にいても「安全とは限らない」世界になります。

3. NIST CSFとの関係

NIST CSF(サイバーセキュリティフレームワーク)におけるゼロトラストの位置づけは、主に次の3機能にあたります。

ゼロトラストの実装は「一気にやる」ものではなく、CSFに沿って段階的に整えていくとスムーズです。

4. 難しく考えないための実装順

  1. すべての管理者アカウントにMFAを適用
  2. MDMで端末の準拠状況を可視化(社給端末だけでもOK)
  3. 条件付きアクセスでリスクベースの制御を有効化
  4. クラウドの監査ログを一元収集(SIEMが理想)
  5. EDRで端末側の挙動を可視化し、侵入後の監視を強化

この5ステップを完了すれば、ゼロトラストの「7割」は達成できます。

5. 中小企業が気をつけるべき落とし穴

ゼロトラスト導入で失敗しがちなポイントは、「技術を買って満足する」ことです。 重要なのは、「誰が」「いつ」「どの範囲で」運用するかを決めること。特に、アカウント棚卸しの放置は命取りです。1年前に退職した社員のアカウントが残っていると、攻撃者にとって最高の裏口になります。

6. ゼロトラストを支える文化づくり

ゼロトラストは技術ではなく「文化」です。 「信頼は検証によって得られる」という前提を全員が共有すること。アクセス制限を「不便」と捉えず「安全な仕事の仕組み」として理解してもらうには、経営層のメッセージと教育が不可欠です。

ゼロトラスト適性をNISTで自己採点

ゼロトラストを構成する3機能(PR/DE/RS)を中心に、現在の成熟度を定量化。 最短2分で、いま何から着手すべきかを可視化できます。

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