「サイバー攻撃」と聞くと、ニュースで見るランサムウェアやフィッシングを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし現実の攻撃はもっと多層的で、技術・心理・経済が絡み合う“戦略的な行為”です。この記事では、攻撃の全体像を分解し、なぜ企業や自治体が狙われるのか、どのように侵入され、どの段階で防げるのかを体系的に整理します。
攻撃者の動機は大きく分けて3つあります。
特に2020年代以降は「金銭目的」と「地政学的意図」が交差し、国家支援型グループが企業や重要インフラを攻撃するケースが増加しています。経済制裁を回避するための仮想通貨窃取などもその一例です。
サイバー攻撃には一定の「段階」があります。これは MITRE ATT&CK などのフレームワークで整理されており、攻撃者は次のような流れで行動します。
攻撃の前段階で、対象企業のネットワーク構成、従業員、サーバー構成、公開システムなどを調査します。SNSや求人情報など公開情報(OSINT)も利用されます。
フィッシングメール、VPNの脆弱性、サプライチェーン経由など、最初の入口を探します。特に近年は「信頼された通信経路」を悪用する手口が多く、EDRやゼロトラストの導入が求められます。
一度侵入すると、攻撃者は管理者権限を奪い、内部ネットワーク全体へ侵攻します。Active Directoryを利用する環境では「Pass-the-Hash」や「Kerberoasting」などの古典的手法も健在です。
目的のデータを盗み出し、暗号化して身代金を要求する、または破壊して社会的混乱を狙う。特にランサムウェアは「二重脅迫(盗んでから暗号化)」が主流です。
技術的な防御だけでなく、組織の「責任の曖昧さ」も狙われます。支社やグループ会社ごとに異なるポリシー、旧システムの放置、担当者の不在——こうした管理のばらつきが攻撃の入口になるのです。
特に中小企業や自治体では、IT管理者が兼任であることが多く、セキュリティ設定が後回しにされがちです。攻撃者はそれを熟知しています。実際、ランサム被害の多くは「未適用の更新プログラム」や「VPNの初期パスワード放置」が原因でした。
最近の傾向として、「直接攻撃」ではなく「取引先経由の侵入」が増えています。ソフトウェア更新サーバーへの改ざん(例:SolarWinds事件)や、委託業者のVPNを突破して本社ネットワークに到達するパターンです。
このタイプの攻撃は防御が難しく、ゼロトラストの考え方——“信頼を前提にしない”設計——が必要になります。アクセス権を最小限にし、通信や操作を常時監査する仕組みが有効です。
生成AIの発展により、攻撃手口も進化しています。自然言語で攻撃コードを生成したり、フィッシング文面を人間らしく自動生成したりする例がすでに報告されています。AIが防御にも使われる一方で、攻撃者側もAIを武器にしているのです。
特に注意すべきは「自動スキャニング+自動侵入」の仕組みです。脆弱なサーバーをAIが検知し、数分で侵入・暗号化まで完了させる。防御側もリアルタイム検知と自動隔離が欠かせなくなっています。
「すべてを守る」ことは現実的ではありません。リスクを特定し、優先順位をつけて対策を行うリスクベースのアプローチが重要です。NIST CSF(Cybersecurity Framework)では、識別(Identify)→防御(Protect)→検知(Detect)→対応(Respond)→復旧(Recover)の5機能に整理されています。
たとえば、資産が正確に把握できていなければ、どのシステムに脆弱性があるかも分かりません。まずは「自社が何を持っていて、どのリスクにさらされているか」を知ることが防御の第一歩です。
技術的な防御を超えて、「人」を中心に据えたセキュリティ文化が求められています。経営層がリスクを理解し、現場が自律的に判断できる体制こそ持続的な防御の鍵です。
サイバー攻撃は止まらない——しかし、「気づく組織」「備える文化」をつくることで被害の連鎖を断ち切ることはできます。攻撃を恐れるだけでなく、理解し、戦略的に向き合うこと。それが本当のセキュリティリテラシーです。
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