「うちの会社なんて狙われないよ。」
そう思っている企業こそ、サプライチェーン攻撃の最大のターゲットになります。
近年、総務省や経産省、IPA(情報処理推進機構)が警鐘を鳴らし続けているのが、
サプライチェーン全体のセキュリティリスクです。
直接標的にされていなくても、取引先や委託先を経由して攻撃者が侵入する時代になっています。
サプライチェーン攻撃とは
サプライチェーン攻撃とは、
「製品・サービス・ソフトウェアの供給経路(サプライチェーン)」のどこかを侵害し、
最終的な標的企業へ侵入する攻撃のことを指します。
攻撃者は、直接防御が堅い企業を狙うのではなく、
よりセキュリティが緩い下請け・委託先・ソフトウェアベンダーを突破口にします。
そして、信頼関係を悪用して「正規の通信・更新・認証情報」を経由し、
最終ターゲットに到達するのです。
実際に起きたサプライチェーン攻撃
世界で有名なケースが、2020年のSolarWinds事件。
ネットワーク管理ソフト「Orion」のアップデートに悪意のあるコードが混入され、
その更新を信頼していた企業や政府機関が芋づる式に侵害されました。
米国政府機関を含む1万8000以上の組織に影響を与えたとされています。
日本国内でも、サプライチェーン経由の被害は増えています。
たとえば、システム開発委託先が攻撃を受け、そこから親会社のサーバに侵入されたり、
機器メンテナンス会社のIDが不正利用され、遠隔でネットワークが操作された例もあります。
なぜ防ぎにくいのか
サプライチェーン攻撃の恐ろしさは、
「攻撃が信頼の裏側からやってくる」という点にあります。
取引先とのVPN接続、リモート保守のアカウント、共同開発環境など、
一度許可された経路は“内部通信”として扱われがちです。
つまり、従来の境界防御モデルでは気づけないのです。
また、ソフトウェアのアップデートや配布用サーバが侵害された場合、
「正規署名付きの不正ファイル」が配布されてしまうこともあります。
利用者から見ると、どこから見ても“正しい更新”に見えるのです。
攻撃の流れ(典型パターン)
① 下請けやベンダー企業のアカウント・システムに侵入
② 正規経路で親会社や取引先へ接続
③ 信頼された通信として不正ファイルやコマンドを転送
④ 検知されずに内部展開し、権限昇格・データ窃取・破壊へ
この一連の流れを食い止めるには、
「相手を信頼する前提」そのものを見直す必要があります。
ゼロトラストという考え方
総務省・NISC・経産省のガイドラインでも繰り返し登場するのが、
ゼロトラスト(Zero Trust)モデルです。
これは、「誰も、何も、自動的には信頼しない」前提でネットワークを設計する考え方。
通信ごとに認証・検証を行い、異常があれば即遮断します。
具体的には、
・取引先・ベンダーを含むID・端末認証の厳格化
・ソフトウェア供給元の署名・改ざん検証
・EDR/XDRによる内部のふるまい監視
・VPNからゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)への移行
といった取り組みが推奨されています。
企業側が取るべき対策
① 委託先管理の徹底:契約時にセキュリティ要件を明文化。
② アクセス制御:外部委託用アカウントは最小権限・期間限定。
③ ソフトウェアの真正性確認:更新元サーバの署名検証を自動化。
④ 内部監視:EDR・SIEM・XDRで異常なふるまいを即検知。
⑤ サプライチェーン全体での訓練:模擬攻撃・共同インシデント演習を実施。
特に「委託元だから安全」「発注先だから責任は向こう」といった考えは、
この攻撃の前では通用しません。
攻撃者にとっては、どの企業も「侵入口」としか見えていないのです。
被害後に何が起きるか
一度サプライチェーン攻撃が成立すると、影響範囲は想像を超えます。
・取引先への通知義務と信頼失墜
・システム停止による業務遅延
・契約解除・損害賠償請求
・マスコミ報道によるブランド毀損
・行政機関への報告義務と改善命令
これらが連鎖的に起こるため、
中小企業でも「1回の事故で経営が傾く」ケースがあります。
まとめ
サプライチェーン攻撃の怖さは、
「信頼」を武器に攻撃されるという点にあります。
どれだけ自社のセキュリティが堅くても、
取引先の1台の端末が突破口になる可能性がある。
だからこそ、今必要なのは「疑う勇気」。
ゼロトラストを前提に、EDRやMDRによる可視化、
そしてパートナー企業とのセキュリティ共創を始めることです。
サプライチェーン攻撃は、どこにでも潜む“見えないリスク”。
信頼を守るためにこそ、まずは疑い、確かめ、備えること。
それが、これからの「ちょうどいいセキュリティ」の第一歩です。
ではまた。
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