サイバーインシデントが発生した際、多くの企業は「とにかく元に戻すこと」を最優先に考えます。しかし実際には、復旧とは単なるシステム復元作業ではありません。復旧を誤解したまま対応を進めると、同じインシデントを何度も繰り返す、あるいは被害を拡大させる結果につながります。
本記事では、インシデント対応の現場で頻繁に見られる「復旧に関する勘違い」を整理し、なぜそれが危険なのか、そして本来どう考えるべきなのかを解説します。
最も多い誤解が、「バックアップから復元できた=復旧完了」という考え方です。確かに業務を再開するためにはシステム復元は不可欠ですが、それは復旧プロセスの一部に過ぎません。
本来の復旧には、以下が含まれます。
侵入経路を潰さないまま復元だけ行うと、攻撃者は再び同じ方法で侵入できます。これは「ドアを壊された家で、鍵だけ掛け直して住み続ける」ようなものです。
インシデント後の報告書で、「原因:フィッシングメール」と書かれることがあります。しかし現実には、原因は単一ではありません。
例えば次のような連鎖が存在します。
復旧で重要なのは「どこで止められたはずか」を洗い出すことです。ここを曖昧にすると、改善策が精神論や注意喚起で終わります。
復旧対応をIT部門に丸投げするケースも多く見られます。しかし、インシデントは経営・法務・広報・人事すべてに影響します。
例えば、
技術的復旧が終わっても、説明責任を果たせなければ「企業としての復旧」は完了しません。
確かに初期化は有効な手段ですが、闇雲な初期化は調査機会を失うという重大な欠点があります。
ログ、メモリ、通信履歴を保全せずに初期化してしまうと、
復旧の正しい順序は、隔離 → 保全 → 調査 → 復元です。
復旧直後は、最も再侵入されやすいタイミングでもあります。攻撃者は「復旧作業の混乱」を狙います。
このフェーズでは以下が重要です。
復旧はゴールではなく、次の防御フェーズへの移行点です。
「暗号化されなかった」「業務停止がなかった」から問題ない、と判断するのも危険です。
攻撃者はすぐに破壊せず、潜伏するケースも多くあります。情報窃取や将来の再攻撃のための足場構築が目的の場合、被害は表面化しません。
正しい復旧とは、以下を満たす状態です。
技術・運用・組織の三位一体で初めて「復旧した」と言えます。
サイバーインシデントからの復旧は、単なる後処理ではありません。組織が攻撃から何を学び、どう変わるかが問われます。
復旧を軽視する組織は、必ず次のインシデントでより大きな代償を払います。逆に、復旧を成長の機会として扱える組織は、着実に強くなります。
「元に戻す」ではなく、「前より強くなる」。それが本当の復旧です。
脅威対策セミナーもしくはサイバーセキュリティアウェアネスセミナーの無料体験ができるモニターさん募集中!
興味ある方はLINEまたはメールでご連絡ください!