サイバーインシデントからの復旧に関する勘違い|shefutech

のちょうどいい
サイバーセキュリティ

サイバーインシデントからの復旧に関する勘違い

サイバーインシデントが発生した際、多くの企業は「とにかく元に戻すこと」を最優先に考えます。しかし実際には、復旧とは単なるシステム復元作業ではありません。復旧を誤解したまま対応を進めると、同じインシデントを何度も繰り返す、あるいは被害を拡大させる結果につながります。

本記事では、インシデント対応の現場で頻繁に見られる「復旧に関する勘違い」を整理し、なぜそれが危険なのか、そして本来どう考えるべきなのかを解説します。

勘違い1:「復旧=サーバーや端末を元に戻すこと」

最も多い誤解が、「バックアップから復元できた=復旧完了」という考え方です。確かに業務を再開するためにはシステム復元は不可欠ですが、それは復旧プロセスの一部に過ぎません

本来の復旧には、以下が含まれます。

侵入経路を潰さないまま復元だけ行うと、攻撃者は再び同じ方法で侵入できます。これは「ドアを壊された家で、鍵だけ掛け直して住み続ける」ようなものです。

勘違い2:「原因は1つに特定できる」

インシデント後の報告書で、「原因:フィッシングメール」と書かれることがあります。しかし現実には、原因は単一ではありません。

例えば次のような連鎖が存在します。

復旧で重要なのは「どこで止められたはずか」を洗い出すことです。ここを曖昧にすると、改善策が精神論や注意喚起で終わります。

勘違い3:「復旧はIT部門だけの仕事」

復旧対応をIT部門に丸投げするケースも多く見られます。しかし、インシデントは経営・法務・広報・人事すべてに影響します。

例えば、

技術的復旧が終わっても、説明責任を果たせなければ「企業としての復旧」は完了しません。

勘違い4:「とりあえず全台初期化すれば安全」

確かに初期化は有効な手段ですが、闇雲な初期化は調査機会を失うという重大な欠点があります。

ログ、メモリ、通信履歴を保全せずに初期化してしまうと、

復旧の正しい順序は、隔離 → 保全 → 調査 → 復元です。

勘違い5:「復旧後は通常運用に戻せばよい」

復旧直後は、最も再侵入されやすいタイミングでもあります。攻撃者は「復旧作業の混乱」を狙います。

このフェーズでは以下が重要です。

復旧はゴールではなく、次の防御フェーズへの移行点です。

勘違い6:「被害が小さいから問題ない」

「暗号化されなかった」「業務停止がなかった」から問題ない、と判断するのも危険です。

攻撃者はすぐに破壊せず、潜伏するケースも多くあります。情報窃取や将来の再攻撃のための足場構築が目的の場合、被害は表面化しません。

正しい復旧とは何か

正しい復旧とは、以下を満たす状態です。

技術・運用・組織の三位一体で初めて「復旧した」と言えます。

まとめ:復旧は“学習プロセス”である

サイバーインシデントからの復旧は、単なる後処理ではありません。組織が攻撃から何を学び、どう変わるかが問われます。

復旧を軽視する組織は、必ず次のインシデントでより大きな代償を払います。逆に、復旧を成長の機会として扱える組織は、着実に強くなります。

「元に戻す」ではなく、「前より強くなる」。それが本当の復旧です。