のちょうどいい
サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティを哲学してみる

 

今回書きたい内容にタイトルを付けるなら、

いちばんしっくり来たのは「哲学」でした。

少しカッコつけた響きですが、今日はこの名でいきます。笑

 

扱いたいのは、サイバーセキュリティの根底にある概念的な“何か”

その“何か”を無理に具体化しきらず、

あえて抽象度を高く保ちながら、定義を積み重ねて本質へ近づいていきます。

 

サイバーセキュリティを一言で言うなら

述語には「守る/保護する/防止する」といった動詞がきます。

そして「何から」「何を」という目的語が必ずつく。

 

暫定の定義はこうです。

サイバーセキュリティ = サイバー脅威から資産を守ること。

ここでいうサイバー脅威、そして資産も、改めて定義しておきましょう。

 

サイバー脅威とは何か

「サイバー攻撃」「サイバー犯罪者」といった類語は挙げられますが、肝は目的と行動。

 

目的

・標的にダメージを与えること

・標的から金銭を奪うこと

 

この目的を達成するために、攻撃者は自由(コントロール)を奪う必要があります。

よって暫定定義:

サイバー脅威=標的の金銭を奪う/損害を与えることを目的に、標的の自由を奪うためITの世界で行われる攻撃。

 

資産とは何か

ビジネス活動に不可欠な情報データや製品

サイバー脅威の標的は、まさにこの資産です。

 

ここまでを重ねると、

守る対象=情報データや製品(資産)

敵=資産の自由を奪う脅威

という関係が見えてきます。

 

「守る」とは何をすることか

ここからが本題です。製品を手当たり次第に並べればよいわけではありません。

定義に照らして目的を達成できなければ、それはセキュリティの名を借りた別の何か。

 

では、サイバーセキュリティがサイバーセキュリティであるために必要な考え方とは何か。

ヒントは、あの有名な一節。

 

彼を知り、己を知れば、百戦殆(あや)うからず。

 

“彼を知り、己を知る”をサイバーに落とす

戦略の本質は情報です。情報には常に現在位置/目的地/ルートがある。

 

目的地:攻撃者の目的(損害/金銭)

現在位置:資産からどれだけ遠いか(ネットワーク外か、侵入の足場があるか)

ルート:どんな手法の組み合わせで辿り着くか

 

攻撃の“ルート”は多様で読みにくい。しかし一つだけ絞り込む方法があります。

それが己を知ること。

 

己を知る=アタックサーフェスを知る

攻撃者にとって最短のルートは、常に脆弱性です(エクスプロイト)。

自分のどこが弱く、どこが開いているかを知らなければ、相手の選ぶルートを絞れません。

 

・ソフトウェア/SaaS/OSS基盤の既知脆弱性

・設定不備、認証の弱さ、露出した管理インターフェース

・ネットワーク構成上の到達性、経路の“低抵抗地帯”

 

開発者より先に攻撃者が見つけるゼロデイ脆弱性もあるため、

「パッチ待ち」だけでは守り切れません。

 

ネットワーク構成を“地図”として把握する

資産の在処、そこへ至る道順、各地点の特徴。

これらは脆弱性と合わせてアタックサーフェス(攻撃可能面)を形づくります。

地図がなければ、どこを守るべきか、どこで止めるべきか、判断ができません。

 

哲学の結論:セキュリティとは先読みし、阻止すること

ここまでを踏まえた定義を、もう一歩だけ磨きます。

 

サイバーセキュリティ = 敵(彼)と自分(己)を正しく把握し、

サイバー脅威の行動を先読みして、資産の自由を奪われる前に阻止すること。

 

たとえゼロデイ攻撃であっても、攻撃者の目的は変わりません

目的を達するために必ず生じる挙動(権限昇格、横展開、認証情報窃取、暗号化の兆候など)を

見つけられる体制を用意しておくことが、負けない戦い方です。

 

“定義に沿った”実装に落とすと

可視化:資産、経路、脆弱性、ふるまいを地図化する(アタックサーフェス管理)

検知と封じ込め:EDR/XDRで兆候を捉え、隔離・失効・ブロックを即時に

先読み:脅威インテリジェンス/攻撃シミュレーションでルートを潰す

回復力:バックアップ/復旧訓練で“自由の奪還”を早める

運用の一貫性:ルール化・演習・監査で“守る”を継続可能に

 

最後に

哲学は抽象です。けれど、抽象があるから具体がブレません。

攻撃者の目的、己の弱点、資産の地図——この3点を外さなければ、

製品の名や流行の言葉が変わっても、守りの芯はぶれない。

 

結論:

敵を知り、己のネットワーク構成と脆弱性を知る。

その上で、行動を先読みし、阻止する運用を回す。

これが、私の考えるサイバーセキュリティの“哲学的”な正解です。

ではまた。

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